人工知能時代の資本主義

(Singularity HUB日本語訳)

技術革新によって人間の仕事がなくなると言われてきましたが、今ほどネット上の仕事が増えたことはないでしょう。

これは非常に明らかな事なので、反対意見はどうしても信仰的になります。

信仰的な意見の前では、議論は無意味になります。

テクノロジーのドン、マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)が、技術の雇用に及ぼす影響についてこう言っています。

アンドリーセンは、創造と同じスピードで新しい仕事が作られていくと信じており、人間の仕事がなくなるという懸念を唱える否定派は間違っていると断言します。

彼の言い分が正しければよいのですが、残念ながら正しくないかもしれません。

これは信仰に関する議論ではなく、現実にある社会秩序の問題なのです。最新技術によって、スキル不要な職種だけでなく、知識労働職も危機に瀕しています。

それはあまりにも急激に起きており、産業全体が影響を受けて多くの職業が無くなって行くことでしょう。多少の職は確かに生まれるでしょうが、それはほんの少しだと思うのです。

そして、職を失った人たちに新しい技術を身につけさせることは難しいのです。

アンドリーセンのような人を訓練してタクシーの運転をさせることはできても、失職したタクシードライバーを再訓練してアンドリーセンのような仕事をさせることはできないのです。

新しく生じる仕事は、専門的なスキルと高い教育水準を必要とし、たいていの人には手が届かないものになるのです。

混乱する社会

私は未来について楽観的で、テクノロジーが社会に多くの利益をもたらすと考えていますが、一方で何百万人もの人が失業することになるのも確かだと考えています。

もし我々がこの問題を無視し続ければ、社会的混乱が待ち受けています。この影響を受けた人たちを養い、変革期をしのがなければいけません。

短期的には、アメリカには、ロボットや工場を作ったり、新しいコンピューター システムをプログラムしたりというような、たくさんの新しい職が生まれるでしょう。

しかし雇用の伸びは長くは続かないと考えます。

変化が加速していく

Uberは、10年以内にドライバーを解雇して自動運転車を使うでしょう。

製造業は労働者の代わりにロボットを使うようになります。

ファストフード店では、全自動食品調理システムを据え付け、会計・財務といったオフィス事務を人口知能が行います。

パラリーガル、薬剤師、カスタマーサポートなどの職種もまた然りです。

これのことがすべて同時に起こるだけではなく、2020年代後半にはそのペースが加速していきます。

アンドリーセンも、テクノロジーによる生産性向上が原因で混乱が起き、職業が消滅するという点では私と同意見です。

彼の自由主義的なシナリオでは、機械化による技能労働者の失業は悲劇ですが、社会進歩の上では避けがたく、経済全体を発展させる”良いこと”なのだそうです。

収入の問題

私の尊敬する科学技術者 ヴィノド・コスラ(Vinod Khosla)は、私と同様に収入格差が及ぼす影響を心配しています。

今起こりつつある機械学習技術の革命(つまりコンピューターが情報分析をして判断を下すこと)について、コスラは下記のように書いています。

人類の未来は明るいのです。この技術革命が劇的に生産性を上げ、豊かさをもたらすのは確実です。

しかし、そこに至るプロセスでは、仕事の性質の変化や、収入格差の増大という様々な問題が起こるでしょう。

人間の労働力や判断力が必要なくなるにつれて、労働の価値は低くなります。

労働は資本に比べて低い価値となり、アイディアや機械学習の技術に比べれば、その価値はさらに低くなるのです。

物が有り余り、収入格差が増大する時代においては、”新しい資本主義”が必要です。

例えば、生産効率的だけに注目するのではなく、好ましくない現象にも目を向けるような資本主義が必要なのです。

新しい資本主義

つまり、本当に議論すべきなのは、新しい資本主義についてなのです。

我々はそれを作り出せるのでしょうか、あるいは技術エリートが富み、失業者が貧しくなっていくのを見て見ぬふりをするのでしょうか。

技術発展のもらたす影響は、それぞれの国によっても違うでしょう。

製造業の仕事が消滅することによって、中国は世界最大の敗者になる可能性があります。

彼らは安全策を講じているとは思えないですし、収入の格差は既に大きすぎるので、その分混乱も大きくなることが予測されます。

一方、発展途上経済にとっては大きな勝利の機会でもあります。

先日、メキシコの実業家カルロス・スリム・ドミト(Carlos Slim Domit)と、彼のメキシコ シティーのオフィスで長々と議論をしましたが、彼は、テクノロジーの進化について驚くほどよく理解していました。

開発途上世界の社会を良くし、情報・教育・医療・娯楽をより多くの人たちに届けられる重要性について、また、技術の進化がもたらす繁栄を分け合い、分散する必要性について語り合いました。

メキシコの人たちが、基本的欲求を満たし、レジャーや勉強に時間を使えるようになれば、メキシコには何千万もの新しいサービス職が出現するだろうと、彼は予言しています。

インフラも何もないところで、やっと日々生活するだけの収入を稼いでいる何十億人もの人々、彼らの生活を良くする大きなチャンスがそこにあるのです。

インドやペルー、そしてアフリカのすべての国にも、少なくとも20~30年の間、つまり、インフラが建設されて人々の必要が満たされるまでの期間は仕事があるでしょう。しかし、それ以降は、大衆を雇用するのに十分な職はなくなるのです。

ベーシック・インカム

膨大な失業に対するスリムの解決策は、週3日勤務を義務化し、すべての人々が仕事に就き、レジャーや娯楽に必要なお金を稼ぐことができるようにすることです。実際、悪くないアイデアです。

我々が向かっている将来、基本的な必需品、エネルギー、そして電子機器などの贅沢品のコストさえ、ほとんどただになるでしょう。

携帯電話の通話や情報のコストが現在ほとんどただも同然になったのと同じことが起こるわけです。そこで起きる問題は、少ない職をいかに公平にシェアするかです。

ベーシック・インカム (基礎所得保障) の概念も世界的にポピュラーになってきています

コスト削減によりお役所仕事はなくなり、政府が国民に対して生活必需品をカバーするだけの収入を支給できるであろうことは明らかだといわれています。

国民全員に生活費となる給付金を与えれば、社会福祉の仕組みを作る仕事から解放されるというのが、このアイディアです。

これのよい点は、労働者がどんな条件でどれだけ働くか、を自らの意思で決められるところです。

哲学、芸術、科学や発明まで、あらゆる分野の中から自ら選んだ仕事でその能力をを発揮することは、文化が予期せぬ形で発展することに繋がります。

未来都市の建築へ

マーティン・フォード(Martin Ford)は自著 「Rise of the Robots」の中で、教育を受けたり、社会活動を行ったり、環境プロジェクトに参加したりといったアクションに結び付けてベーシック・インカムが支給されるべきだと言っています。

そうすることで、人はバーチャルな世界で悶々としているよりも、実際に働きたいというモチベーションを得られるでしょう。

一方で、そうなると政府は、一人一人に何が妥当なのかを決めるという不要な仕事をまたしなければならなくなる気はしますが、政府にとっては、崩れかけている都市インフラ再建のために労働力を割く機会にもなります。

センサーやナノ物質、さらに3Dプリンティング技術を使えば、エネルギー効率の良く質の高い生活を維持し、巨大なスマートシティーの建設も可能です。

SF映画で観た未来都市を考えてみましょう。このようなインフラ・プロジェクトには様々なスキルが必要となるので、職を無くした労働者を再訓練するのもよいでしょう。

やりたいことをやる時代

インターネットの先駆者ヴィント・セルフ(Vint Cerf)と起業家 デビッド・ノードフォース(David Nordfors)はもう一つの解決策を提案しています。

それは、仕事と地球上の各個人のスキル、才能、情熱、経験、価値等全てをマッチンング可能な人工知能ソフトの開発です。

今は、仕事はほとんど無限にあるにもかかわらず、全人類のほんの一握りの能力しか活用されていないというのです。

多くの人々は自分の仕事が嫌いなので、結果として膨大な量の生産性が無駄になっているというのです。

人々が熱中できる仕事をやらせることで、その能力を100%傾けて働ける仕事環境を創造することができます。仕事が捗った分、経済が拡大するという訳です。

これはユートピアみたいな話ではありますが、、我々が目指すべきものでもあります。

我々の未来には、様々な問題も可能性も無限にあるのです。

準備を怠らず、万人のためになる新しい資本主義を模索しなければならないでしょう。

原文記事(Singularity HUB) BY

フォローする

コメント

  1. KK より:

    BIやったらマイルドヤンキーとかが収入を増やす手段として子供を作りまくって地球じゃ養いきれないレベルに人口が増大するんじゃないの?
    暇で金無いし天才やAIや相手に金儲けなんて無理だし、Make的なモノづくり・ソフトづくりなんて高尚な趣味も無いし、環境保護なんてドローンのが上手くやれるしで、やること無くて育児費の不安が無いからパコパコしまくってポコポコ産みまくる人達が、最初の世代は数%程度でも、次は10%、その次は30%、次は90%、次は99%、次は99.99%みたいにねずみ算式に増えて、NGR革命でも養いきれない、ダイソン球でも無理なレベルに増えると思う。マイルドヤンキーじゃなくても避妊しないカソリックがいれば同じか。
    無限インフレーション宇宙論みたいな真空エネルギーの物質化による無限資源革命をAIかポストヒューマンの超天才が成功させてくれなきゃ、貧乏くさい産児制限が結局は必要になる。