ドローン災害救助に学ぶ日本のプラットフォーム戦略

先日、北海道でドローンを使った山岳救助のコンテスト、Japan Innovation Challenge 2016が内閣府、国交省、経産省の後援で行われました。

NHKの朝のニュースでも放映されていたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

このコンテストは、人間の体温に設定したマネキンを東京ドーム60個分(300ha)の場所のどこかに設置し、無人ロボットを利用して「発見」「駆付」「救助」の3カテゴリーで競うもの。

実際の山岳地帯を使っていることなどから非常に実践向けのコンテストだったと言えるでしょう。逆にこのようなコンテストが今までなかったことが不思議ではありますね。

20161025_04課題解決型のコンテストはテクノロジーの進化に大きな役割を果たし、そして、新たな課題を発掘します。これらかも様々なコンテストが行われることを期待したいところです。

ハードウェアの進化は一定レベルに達している

参加した方によると、使用されたドローンの大半は中国DJI社製のものだったそうです。

かつて、覇権を握った日本のエレクトロニクス製造業は汎用ドローン市場において完全に中国に先行されたといってもよいでしょう。

さて、最新の高機能ドローンはちゃんと設定すればGPSにより自動運行をさせることは難しくありません。バッテリーの飛行時間やペイロード等の細かい制限はありますが、ハード技術的には十分に現場投入可能な段階であると言えるでしょう。

ところで、センサーやバッテリー技術も毎年加速度的に進化しているのはご存じのとおり、今後もさらに進化していくでしょう。動きの速い中国企業が先行する実態があります。

実際に米国ではロケット発射が民間に移行してしまった点などを見ても、囲い込みや補助金による国家主導の開発を得意とする日本のやり方も大きな転機を迎えていると言わざるを得ないのでしょうね。

しかし、これらの最先端だったはずのドローンも、このコンテストにおいては、落下し返ってこない機体が続出します。

20161025_17そして、NHKではドローン同士が衝突するという衝撃映像も公開されていました。

(ご存知の通り、実運用においては、ドローン同士を衝突させるのはかなり難しいのです。)

 

実運用におけるソフト(運用ノウハウ)の課題

朝のニュースでは赤外線技術が機能せず自動運行を試したと説明されていましたね。でも、これは一般向けのわかりやすい説明でしょう。

目視のできない数キロ離れた山岳地帯です。このコンテストに参加するチームが最初から自動運行の技術を持っていなかったとしたらそれはずいぶんお粗末な話です。

20161025_34結局、最初に課題を解決したチームはドローン撮影の運用技術のノウハウを持つベンチャー企業であるチーム(iRobotics)でした

(iRobotics社設立にはドローン撮影の第一人者であるヘキサメディアの野口克也氏が関わっています。)

大学や大企業がどんなに高機能なハードウェアを持っても、実戦で飛ばしているというノウハウにはかなわなかったのです。

そして、こと産業レベルのドローンの運用に関しては運用ノウハウが全く巷では育っていないことが明らかになりました。

ドローンをどれだけ高機能にしたところで、一機でできることは限られています。またバッテリーなどの物理的な限界もあります。

いかに多種類のドローンを組み合わせて状況に合わせた運用ができるか、そして、いかにドローンを使わないか・・・の判断も重要なのです。(山岳救助においては、ヘリコプターや人による救助隊との組み合わせが重要です。)

実は、ここに日本のプラットフォーム戦略の曙光が隠されていると思うのです。

ソフト(運用ノウハウ)のプラットフォームこそ必要

ハードはこれからも日進月歩を続けるでしょう。そして、ハードのプラットフォームを握ることは重要です。しかし、それはともすると技術先行の自己満足の開発になるかもしれません。

機体開発からサービスまで垂直型で開発している企業も多いですが、技術の一箇所にボトルネックが生じると最終的にデファクトスタンダードが取れない危険を孕みます。

ハードの技術開発が先行しているのは世界の兆候といえるでしょう。水が上流から下流に流れるように、ハード技術の進展がドローンの業界を作ってきました。

しかし、ここから下流から上流への逆流が始まると考えています。ハードの技術レベルが一定に達し、運用ノウハウの展開や人材育成、実際のサービス開始のフェーズが始まるからです。

「実際の運用ノウハウ開発のプラットフォームを抑えたものが、ハードの開発まで影響していく」その可能性は非常に大きいと思います。

それこそが我が国が注力して育てていくべきソフトのプラットフォームではないでしょうか。

日々届く悲痛な叫び

実は、コンテストに優勝したiRobotics社には遭難者の家族の方々から、「私の家族を助けてほしい」という悲痛な連絡が多数届いているということです。

しかし、このエリアにおける現在の動きはあまりにも小さく、そして課題は山積しています。

例えば、ノウハウを確立しつつあるこの企業はベンチャー企業に過ぎず、山岳救助・捜索のプロではありません。また、広大な捜索範囲を探すには資源も資金も足りないのです。

毎年、登山による遭難者は3000人以上といわれています。登山ブームなどもありこの数字はどんどん膨らんでいます。

今から準備して、警察・消防・自治体にドローン部隊などを整備していければ、来年の登山シーズンには多数の命が救える可能性が大いにあります。大した予算ではありません。

今こそ世論の力で大きな力を動かすではないでしょうか。

日本から人類規模の課題を解決に役立つプラットフォームを生み出せればと考えています。

(画像出典:NHKホームページより)