世界に「桃源郷」が到来するーSU講義録

シンギュラリティ・ユニバーシティ(SU)のエグゼクティブ・プログラムに参加した弁護士の中山さんから新たなレポートが到着しています。


SU共同創設者ピーター・ディアマンディスは、著書『アバンダンス(桃源郷。恵まれ、満たされた世界)』(邦題:『楽観主義者の未来予測』)でも、テクノロジーの進歩がどれほど人類に貢献したかを説いています。

この7月に、SUのエグゼクティブ・プログラムにて、彼の熱血講義を受講してきましたのでその概要を纏めます。

世界にアバンダンス「桃源郷」が到来する

考え方、捉え方が重要です。今は、壮大な夢が実現し、一人の個人が世界を変えることができる時代です。こんな時代は未だかつてあったでしょうか。

データを見れば、世界に、何不自由のない「桃源郷」が到来することは明らかなのです。

たとえば、収入、寿命、食料入手率は、どんどん上昇しています。一方、エネルギー、移動やコミュニケーションにかかる費用は、激減しています。

テクノロジーの力により、かつては不足していたものが、有り余るほどあふれ出てきます。

たとえば、ナポレオン3世の時代、アルミニウムは金を上回る、最も効果な貴金属でした。しかし今、世界にアルミはあふれています。現在、ダイヤモンドも廉価に生成されつつあります。ダイヤは「希少な宝石」ではなくなるのです。

我々は、「古き好き時代」をなつかしく思うでしょう。でも、それはそんなにいい時代ではありませんでした。戦争はあり、寿命は短く、野蛮で…、また、生活するためだけに週に80時間も働いていました。

教育とヘルスケアのお陰で、家族あたりの子どもの数も減り、平均健康寿命は、40年も伸びようとしています。

自動車事故や航空事故も激減しています。

我々は、なんと素晴らしい時代に生きているのでしょう。

なぜこのような変化が起こったのでしょうか?

エクスポネンシャルな進化

このような変化をもたらしたのは、テクノロジーのエクスポネンシャル(加速度的)な進化なのです。

あらゆるものの、コストパフォーマンスは飛躍的に向上しています。

かつて、会社を立ち上げて軌道に乗せるだけで、5億円もかかりました。今は、わずか50万円で可能です。多くの人が起業して、多くのアイディアが実現できるのです。失敗する余裕、も生まれてきたのです。

億万長者になりたければ、10億人を助けましょう。今はそれができる時代です。そういう世界に生きているのです。

いくつかの例を具体的に見ていきましょう。

テクノロジー

1956年には、5メガバイトは150万円しました。2005年には、128 メガバイトが1万円に下がりました。今、1万円では、128 ギガバイトが手に入ります。

また、今のスマホの性能は、20年前のスパコンを上回ります。

このような、安くて早いテクノロジーが複合的に用いられると、予想もできない結果をもたらします。次世代のイノベーションが起きるのです。

我々の思考は、限定的で直線的となりがちです。しかし、今後は、グローバルに、エクスポネンシャルに、考えねばなりません。

エクスポネンシャル時代の「6 D」

テクノロジーの加速度的進歩を享受するためには、以下の「6D」を取り入れることが重要です。

① デジタル化−Digitized
アナログデータがデジタル化されることが、スケールすることの第一歩です。

② 潜行−Deceptive
新技術は、いきなり陽の目を見ません。今をときめく3Dプリンティング技術自体も、30年も前から、実は存在していました。

③ 破壊−Disruptive
テクノロジーの普及は、文字通り「破壊的」なインパクトを持っています。Uberがタクシー業界を、Airbnbがホテル業界を脅かしているように、業界自体が「破壊」される時代です。

④ 非物質化−Dematerialized
みなさんのお手元のスマホに、「非物質化」した情報・サービスが、いくつあることでしょう。

⑤ 非収益化・無償化−Demonetized
通信コストはゼロに近づきます。みなさんのスマホの「フリー」アプリは、かつては1億円相当の価値を持っていました。スカイプやフェイスタイムを、みなさんも利用しているはずです。

⑥ 大衆化−Democratized
非物質化と非収益化すれば、市場シェアが広がります。あっという間に、グローバル化します。ガレージで遊んでいる子どもが遊び半分で作ったガジェットが、世界の10億人に広がるのです。

これらが現実です。これにより、業界が「破壊」されます。アップルが、通信業界や音楽業界を破壊したように。

世界のオンライン化

1000年前、社会にインパクトを与えることができるのは、一部の王侯貴族のみでした。その影響も、国内/地域限定でした。

100年前、大企業が出現し、社会的インパクトの裾野は広がりました。しかし、まだ限定的でした。

今、人類全てにインパクトを与えることができます。世界を変えようと本気で思っている人は、変えることができるのです。

2010年の、世界のインターネット普及率は、23%でした。2020年には、60%になります。FacebookやGoogleその他の企業は、この普及率を上げようと躍起になっています。

今後、30億人が、オンライン化するのです。そして、この30億人は、我々がネットを利用し始めた20年前の状態で登場するのではありません。グーグル翻訳と高速アクセスという恵まれた状態で、登場するのです。

そして、この30億人は、それぞれ斬新なアイディアを抱きながら、登場するのです。だからこそ、変化の速度が、加速度的(エクスポネンシャル)になるのです。

「月面着陸」(Moonshot)を目指せ

月面着陸(Moonshot)とは、10%の改善ではなく、10倍の革新を求めることです。安価なリソースに恵まれている現在、10%の改善を求めている場合ではありません。

10倍を目指すことは、もはや100倍難しいことではなくなりました。それどころか、10倍を目指すことで、100倍以上の結果が得られます。

私が目指しているMoonshotは、以下のとおりです。

1.人間の寿命を伸ばす

どうやって、健康寿命を30〜40年伸ばせばいいでしょうか?

世界最大の、ゲノム配列施設を設立しました。2020年には、10億人超の遺伝子情報を集めます。

統合された医療情報が、健康な遺伝子を作成することを可能にします。マイクロバイオーム(体内微生物)や、ディープラーニングを活用して、癌を最も早く発見します。

ヘルスケア革命を起こすというのが我々のミッションです。

医療は、よりカスタマイズされ、より予防的になります。病気になってから医者に行くというのは、車を大破させてから修理工場に出すようなものになります。

2.資源へのアクセス向上

地球に近い小惑星には、プラチナ、ウラニウム、イリジウム等の鉱物資源があふれています。

アメリカ大統領は、「宇宙で獲得したもの」を所有することができる、という法案に署名しました。

これらの宇宙由来の鉱物は、農業や石油生産へも好影響を与えることが分かっています。

Moonshotを目指すことで、地球上では想像もできなかったことが、起こりつつあるのです。

3.世界の大問題の克服

私が創設したXプライズ財団では、教育、生命工学、環境その他に、報奨金を与えています。

たとえば、読み書きのできない子どもに18か月で読み書きを教えるなどのプロジェクトに、オープンソースで、知恵を集めています。集まった知恵を凝縮したアプリを開発し、タンザニアで、ローンチする予定です。

この財団では、だれが正解を知っているか、を重視しません。そんなことは分かりません。問題提起をして、報奨金を与え、正解が来るのを待っているのです。

(中山達樹さんより寄稿)