破壊的進化におきる6つの事象(6Ds)

「エクスポネンシャルの6D」とは、シンギュラリティ・ユニバーシティのファウンダーであり、XPrize財団CEOでもあるピーター・ディアマンティスの提唱するエクスポネンシャルな成長を説明するフレームワークです。

エクスポネンシャルってなんだ?と思う人はこちらへどうぞ。

彼は様々な場所で、この6つのDを説明しています。最近の著書「BOLD」でも書かれていますし、シンギュラリティ・ユニバーシティの講義の動画も一部公開されていますので、お時間がある方はぜひ見ることをお勧めします。(一番下)

エクスポネンシャルな成長ではこれらが連鎖反応的に起きるのだとピーターは説明します。それでは、それぞれを簡単に見ていきましょう。

1つめのDデジタル化|Digitalization

イノベーションは人間がアイデアを共有・交換することで生まれます。進化の加速化はコンピューターによってデジタルな表現・保存・交換が可能になったことと無関係ではありません。

物理的プロセスであったものがデジタル化されデジタルプロセスに乗ると、例外なく光の速さで広まり、複製・共有されていくことになります。ですから、6つのDがデジタル化から始まるのには意味があります。そこから先の成長速度はムーアの法則に乗り、エクスポネンシャルになるのです。

例えば写真を考えてみましょう。写真はある時、フィルムに撮影して紙に現像し保存するという物理的プロセスから、デジタルプロセスに乗りました。モノの制約から解き放たれた瞬間です。そしてデジタル化された写真のエクスポネンシャルな成長を予見できなかったコダックは倒産しました。

考えてみてください。手紙も、音楽も、映像も、電話も、新聞も、図書も、すべて物の制約から解き放たれてデジタル化されました。遺伝子も、神経(知能)も、製造業も、ファイナンスも、移動手段(自動車)も今センサーがありとあらゆるところにつけられデジタル化されてきていると言ってよいでしょう。

2つめのD潜行|Deception

ピーターは、デジタル化の次に起きるのが潜行だと説きます。これは起きる事というより変化の特徴といえるでしょう。エクスポネンシャルな成長は直線的な成長とは違い、当初は誰も気づかないほど小さいところで進んでいきます。

ピーターは、デジタルカメラの画素数を例にしています。0.01メガピクセルを倍にしても、0.02メガピクセルにしかなりません。次の段階でも0.04、0.08になるだけであり、パッと見はどれもゼロに等しいのです。ここで直線的な成長と同じ地味な成長だと勘違いすると大きな間違いが起きます。巨大な変化が待っているのです。

日本の民話に、「彦一どんとお殿さん」や「曽呂利新左衛門」というものがあります。どちらも、ある日手柄をもらえることになった百姓が、米一粒から一定数だけ米粒の数を倍にしていくことを提案します。それを聞いたお殿さまはそんなに少しでいいのかと承知しますが、後で大変なことになるというトンチ話です。

ドラえもんのバイバインという道具にも共通することが言えます。人間は直線的な思考回路を持ちますから、往々にしてエクスポネンシャルの力を見誤ります。それがここで言われる潜行です。

3つめのD破壊|Disruption

破壊的な技術とは、新しい市場を創造し、既存の市場を破壊するイノベーションである。とピーターは定義します。

破壊は常に潜行に続いて起きることから、技術的脅威が最初に姿を現すときにはばかばかしいほどつまらないものに見えます。デジタルカメラはコダック自身が最初に開発したのですが、コダック経営陣はこれを玩具だとしか見ませんでした。AT&Tの経営陣は携帯電話が固定電話に代わることはないと考えていたのです。

結局、コダックはデジタル化の波に追いつくことはできませんでした。ドラえもんのバイバインも、結局ドラえもんの手には負えなくなりました(笑)

この潜行から破壊へ移るポイントを我々はいろんなところで見ることができます。例えば、スマートフォンが爆発的に普及したのは典型でしょう。そのスピードはiモードが普及した倍以上のスピードでした。そして、ドローンの普及やアップルウォッチ、テスラの電気自動車などにそれを見ることができます。気付いた時には既存の誰の手にも負えないスピードになっていることが想像に難くありません。

そしてさらに、次の大きな3つのDへの連鎖へとつながっていきます。

4つめのD非収益化|Demonetization

非収益化、つまり、これは業界から金銭という因子が消えることです。つまりタダになることを意味します。コダックの収益源であったフィルムがなくなり現像という収益がデジカメによって無料になったのと同じです。

かつて高額な料金を取っていた長距離電話はスカイプによって非収益化され完全に過去のものになりました。ネットフリックスはレンタルビデオ産業を非収益化しました。インターネット上のデジタル化された辞書は無料であり、ブラウザーも無料です。コンピューターがワードプロセッサーを非収益化し、そのワープロソフトがグーグルが提供するグーグルドキュメントなどにより急速に非収益化しています。

ピーターは非収益化にも潜行性があると説明します。そして既存の産業の人にはそれを認めることが難しいので、決定的に遅れてしまいます。例えば、日本でも民泊として取り上げらえるAirbnbによるホテル業界の収益性の破壊、Uberによる運送業界の非収益化などは、もうすでに潜行から破壊の段階に入っています。

5つめのD非物質化|Dematerialization

非収益化がモノやサービスに払われていた対価が消えることを意味するのに対し、非物質化とはモノやサービスそのものが消えることを意味します。

デジカメが普及してフィルムカメラが消えてしまいました。しかし、その次の瞬間にはデジカメも消滅してスマートフォンのアプリの一つになってしまいました。高機能は万能機器が出現した瞬間、すべてがそこにとりこまれてしまうのです。

過去に非物質化したものを見ると感慨深くもあります。今は記者もカメラを持ち歩かずスマートフォンで取材する時代です。電話機も新聞もテレビもレコーダーもゲーム機も図書館も百科事典も地図も、全部スマートフォンで済むようになりました。しかも庶民の手に届くレベルのスマートフォンです。

いずれレントゲンやMRIみたいな高額の医療機器等もすべてスマートフォン(みたいな万能機器)に取り込まれていくのでしょう。

6つめのD.大衆化|Democratization

かつて、高価であり富裕層だけの物であったもの(例えば写真機など)がエクスポネンシャルな連鎖反応の最終段階となり、非収益化と非物質化の論理的帰結として大衆化していきます。物理的なモノがビットに代わり、デジタルプラットフォームに流れ込むことでコストがゼロになり、結果として誰にでも手に届くものになるのだとピーターは説明します。

実際にスマートフォンを使って何十億円もする医療機器に勝るとも劣らない診断技術を開発しようとしている会社があります。すでに実証段階なのです。これにより、アフリカの隅々でもガン診療ができるようになります。

人工知能プラットフォームは多額の費用をつぎ込んで開発されていますが、グーグルやIBMといった各社は無償で開放しようとしています。誰にでも簡単に使えるようになります。

エクスポネンシャルな会社はこれらを理解しうまく活用し、規模に関係のない桁違いの影響力を社会に与えていきます。それがまさにピーターがシンギュラリティ・ユニバーシティで教えていることでもあります。興味のある方はぜひ我々にもご連絡ください。

また、ピーターはこのようにも言っています。

「直線的な思考しかできない者にとっては、6つのDは6人の死に神に他ならない・・・・」